SFドラマ『宇宙戦争』で世紀の大パニック!?宇宙人襲来の騒動に迫る!!(2/2)

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画像:blumblaum on flickr

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過剰な演出

アメリカ全土をパニックに陥れた宇宙人襲来のニュースが、ラジオドラマだと気づく人は少なかった。そこにはラジオ局側の過剰な演出にあった。ラジオドラマは、実際に扱うニュースのような演出が施されていた。

ラジオドラマは、アメリカのCBSネットワークの番組『マーキュリー劇場』内で放送された。『マーキュリー劇場』は低視聴率の打開を思案していた。そこで、ラジオドラマをニュース報道の体裁で緊迫感あふれる演出を考えた。

原作のSF小説『宇宙戦争』は、20世紀初頭のイギリスが舞台となっている。ラジオドラマ内では、実在するアメリカの田舎町に設定を移し、現代風にアレンジを加えた。生放送のニュース実況は、今まさに襲撃が起こっているように演出された。

過剰な演出はこれだけに終わらない。ニュースキャスターからレポーターまですべて無名の新人俳優を使って状況をリアルに設定した。過去の事件・事故のニュース実況を基に作られた台本は、現実味あふれるものとなった。

またラジオドラマのはじまり方にも工夫が施されていた。番組内でははじめ音楽番組が放送されていたが、途中で中断され速報という形で臨時ニュースが入る。アナウンサーの鬼気迫る宇宙人襲来の報道からドラマははじまる。

そのあまりの過剰な演出は、ラジオを聞く者に現実とフィクションを混同させる危険性があった。そして、それは現実のものとなってアメリカ全土をパニックに陥れたのだ。

聴取者の反応

臨時ニュースの体裁で放送されたラジオドラマ『宇宙戦争』を多くのアメリカ国民は信じた。ラジオドラマが開始されてから宇宙人の襲来を本物と混同した人々は、家を飛び出し山や森に逃げる者が続出した。

ラジオの情報から宇宙人の奇妙な光線や火炎放射の攻撃から身を守るため濡れたタオルを持参して逃げる者や武装する者まで現れた。また教会に逃げ込み、神に祈る者まで続発する。

またラジオドラマを本物と信じた者がラジオを知らない者にまで言い伝えたことで、電話はパンクし交通機関は停止状態となった。警察にも電話は殺到し、事態の収拾に追われた。人々の鎮静化を図るため警官隊が出動する騒動にまで発展した。

しかし、多くの聴取者はこれをラジオドラマと知っていた。宇宙人襲来がフィクションであることは、番組の始まりと終了間際に数回ほど伝えている。冷静にラジオを聞いていた人には理解できた話だ。

また新聞の番組欄を見直してドラマだと気付く者や他局のラジオ放送を比較してこのラジオ局だけ臨時ニュースを放送するのはおかしいと気づく者もいた。他にも『宇宙戦争』の内容を知っていた者や非現実的すぎる展開に疑問を持った者はパニックに陥らなかった。

騒動のその後

アメリカ国民が宇宙人襲来を信じた要因には時代背景も関係している。放送された1938年にはヒトラー率いるナチス・ドイツが台頭し、世界が緊迫していた時代でもあった。現に翌年から第二次世界大戦は勃発する。

またアメリカでは世界恐慌の真っ只中でもあり人々の精神的に追い詰められてもいた。そこに開戦の緊張感が重なり、アメリカ国民の感情がいつ弾けてもおかしくなかった時代なのだ。

不安定な時代に宇宙人襲来のニュースが入ったことで人々の感情は一気に高揚し、パニックに繋がったと考えられるのではないだろうか。そしてそれは思わぬバッシングをラジオ局にもたらす。

アメリカ全土を巻き込んだ宇宙人襲来の騒動だが、後年にはパニックは一部であったという考えも浮上している。警察やラジオ局への問い合わせが殺到したことは真実であったかもしれないが、そこまで大々的なパニックは起こっていないという見方である。

当時のラジオは新しいメディアとして注目されていた。それ以前は新聞などの紙を媒体としたメディアが中心となっていた。しかし、ラジオという新しいメディアの登場に新聞社は焦りを感じていた。

新聞メディアはラジオの評判を落とす目的で騒動に便乗してワザと大々的に取り挙げたのではないかというのだ。一部のパニックは発生したが、それ以外に騒動に関わる証拠は無い。過度な騒動は新聞社によって作られた可能性があるということだ。

しかし、真実はわからない。騒動は75年以上前になる。実際にアメリカ全土を巻き込んだ騒動に発展したかもしれない。そして現在でも騒動の大小はあるが、我々はメディアが作った騒動に踊らされているかもしれないのだ。

参考サイト:
現代事件簿
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