踊り狂う奇病!?集団パニックを誘うダンシングマニア(2/2)

ダンシングマニア 奇病 ペスト 中毒

画像:Ed Schipul on flickr

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黒死病説

黒死病は「ペスト」として世界中で知られている伝染病です。ペストは、ネズミから広まった病気で、感染したネズミの血をノミが吸い、今度はそのノミが人間の血を吸って菌がうつる病気です。感染者の皮膚が黒くなることから「黒死病」と言われ、治療法が見つかるまで感染すれば死ぬ病と言われ、恐れられていました。

ペストは紀元前から人々に恐れられていた伝染病です。特にヨーロッパでは、14世紀にペストが大流行し、その後も17世紀から18世紀まで何度もペストによる犠牲者がいます。このヨーロッパ各地で騒がれたペストが、ダンシングマニアの現象を引き起こしたとも言われています。

集団で踊り狂うダンシングマニアは、ペストの感染者ではないかという考えです。感染者はペストの何らかの作用によって、筋肉や脳の機能に一時的な異常を引き起こし、何日も踊り狂うようになったのではないでしょうか。ストラスブールでの一件も1人の女性がペストに感染し、それが村人に伝染し、集団で踊り狂う現象にまで発展したというわけです。

しかし、それではペストの病状とかけ離れてしまいます。ペストの感染者の多くの病状をみると、倦怠感や悪寒、高熱、頭痛が窺えます。また意識の混濁や下痢、心臓の衰弱もあるため、踊りとは無関係のようにも思われます。身体が高熱を放ち、脳に何だかの作用があったとも考えられますが、少々強引なようでもあります。

稀に踊り狂うような病状が1人いたとしても、それが集団に感染するとは考えにくいのではないでしょうか。

中毒説

穀物などに寄生する毒性の強い菌が麦角菌です。麦角菌は小麦や大麦、ライ麦などに寄生します。麦角菌にはアルカロイドという有毒な成分が含まれているため、一部の医薬や麻薬にも使われています。麦角菌には、感染者に幻覚を誘発させる恐ろしい特徴が見受けられます。

つまり、ダンシングマニアは小麦やライ麦などの穀物を食べ、麻薬と同じような中毒を発生させた村人が、幻覚によって踊り狂ったという説です。実は中世のヨーロッパではこの中毒が蔓延する騒動が度々起こっています。

集団パニックで代表されるのが、セイラム魔女裁判です。アメリカ開拓時代にセイラムという村で、悪魔に憑りつかれたとされる女性たちが異常な行動を起こし、200人近い女性が魔女と告発され、投獄、死刑にされた事件です。

この事件の時代背景には、ヨーロッパによる植民地化が進み、アメリカ一帯が混乱状態にありました。セイラムの村で起こった事件は、無実の人間を魔女と騒ぎ立て、次々に乱暴な裁判を行うという、一種の集団パニックでした。その原因の一つに、麦角菌による中毒も関係していると言われます。

麦角菌による幻覚作用が魔女とされる女性たち、あるいはセイラムの村全体に蔓延し、集団パニックを引き起こしたという可能性も考えられるからです。

ストラスブールのダンシングマニア事件は、1人の女性が麦角菌の幻覚に侵され、踊り狂うという異常な行動からはじまり、村全体に幻覚の中毒が蔓延したのでしょう。加えてペストや病に怯える村人たちの恐怖が混乱を生み、集団パニックに繋がったとも考えられるのではないでしょうか。
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