【実話怪談】図書室の隅に置いてある決して借りることのできない本がある…そこには悲しい物語があった

図書館 日記帳
9,546 views
2016/08/20
怪談
私は読書が好きだった。

お父さんとお母さんは、私が小さな頃からたくさんの本を買ってくれた。本の中の登場人物たちは、皆キラキラしていて、私には無い何かを持っている気がした。

小学5年生の頃、休み時間は学校の図書館へ行くの日課だった。図書貸し出しのカードを自分で手書きする。欄が埋まっていくのを見るのが好きだった。

こんな毎日を送っていると、いつしか、図書館の本をほぼ全部読んでしまっていた。新刊は時々しか入ってこないし、文字ばっかりの難しそうな本だって、私にとってはもう読んだものばかりでつまんない。

だけど、1冊だけ。図書館にある、あの本だけはまだ読んだことが無かった……

その本は、図書館の奥の戸棚の隅っこにある。

棚の一番下。分厚い他の本に挟まれ目立たない、真っ黒の本。手に取ったことがないから、何の本なのかはわからない。

その本の存在を知ってからは、休み時間の度にダッシュで図書館へ向かった。でも、毎回私がその棚へ着くころには、別のクラスの男の子がその本を持っていってしまうのだ。毎回同じ男の子。その子が毎回持っていってしまう。

私はその背中をいつも物惜しげに見つめるしかなかった。

あの本がどうしても読みたかった私は、突飛なアイディアを思いつく。それは図書委員になること。図書委員になれば、貸し出しの手伝い当番の時に誰よりも先に図書館へ入れる、そう思った。先生からカギを受け取って、そのカギで図書館を開館させるのも当番の仕事の一つだから。

5年生の後期に入り、それを実行に移した。図書委員になった。

そして最初の当番の日。

職員室へ鍵を取りに行き、図書館の鍵を開ける。あの真っ黒の本を借りるために。
中へ入ると、あの本の置いてある棚へ向かった。本を読む机、他の本棚をいくつか曲がりその棚へ向かう。しかし、例の棚へ着いた時、またあの男の子が黒い本を持っていこうとしていた。

あの子がいるはずはないのだ。私が鍵を開けたのだから、先に入れる子は居ないはず…なのに。

私はその男の子を追いかける。

しかし、男の子が曲がった棚の先に、その子の姿は無かった。ただ、床にはあの本が落ちていた。表紙にも、背表紙にも何も文字は書かれていない。しかし、裏表紙に「マサキ」という名前がある。

これは日記だと気が付いた。私は恐る恐る、ページを開いた。


19××年 4月18日。 新しいクラス。だんだんとみんなの名前を覚えられてきた。

19××年 6月2日。 雨ばかり。外で遊べないから、僕は図書館で本を借りた。

19××年 7月10日。 クラスに居るのが嫌だ。僕はいじめられているのかな…。

19××年 8月25日。 もう少しで学校が始まる。嫌だ、行きたくない…。

19××年 10月9日。 どうして?どうして僕が?何も悪いことなんてしていない。

19××年 3月1日。 もう耐えられない…。さようなら。


ショッキングな内容だった。この日記を書いた男の子はいじめを受けて苦しんでいるようだった。

私はその本を閉じた。しかし、なにやら粘ついた感触が両手にある。その時気づいた。黒い本はよく見れば黒色ではなく血の乾いた跡だ。血で黒ずんだ日記帳だったのだ。

「その本僕の…。カエシテ…、カエシテ…。」

目の前に先ほどの男の子が居た。

今まで見たことが無かったその顔は、驚くほど真っ白だった。

その子は私の手から恐ろしいスピードで日記帳を奪いとると、図書館の窓から外へ飛び出していった。ここは5階だ。

恐る恐る私はその窓から下をのぞき込む。しかし、そこに男の子の姿は無かった。

そして、あの黒い本も無かった。

いじめを苦に図書館から飛び降りた男の子がいた事を後で聞いた。5階からアスファルトの地面に激突した彼は、頭から血を流して息絶えた。

近くには彼の血で染まった日記帳があった。