
オロン・カッツ氏は、フィンランド出身でデザイナーとして活躍後、医大で細胞工学や組織培養の技術を学び、バイオテクノロジーとアートを融合させたバイオアートを制作するアーティストです。
これまで彼が手掛けた作品は、再生医療技術を用いて培養細胞で表面を覆ったミニチュア人形の制作、皮革が再生されるまでの過程を見せる作品など、常に「生命と科学」を主題に置いてきました。
バイオアートの意義について「バイオとアートのお互いの違った一面に気づかされる」「進歩の早い科学の現場を伝えるためのアート」と語っています。しかし、オロン・カッツ氏がバイオアートに込めた想いはそれだけではないようです。
昨年、バイオアートの展覧会が大阪で開催されました。オロン・カッツ氏の作品は、細胞の成長と死に至るまでの過程を表現した作品を展示しました。タイトルは「Better Dead Than Dying(死にかけなら死んだほうがましだ)」です。

出典:japan.cnet.com
細胞は、生物学の試験や研究などで多く使われる「ヒーラ細胞」です。ヒーラ細胞は子宮頸がんで亡くなった黒人女性から作られた世界初の培養細胞です。つまり、提供者本人が死んでも細胞だけは生きているのです。
このヒーラ細胞をアート作品として使うことは「生と死」の表現だけでなく「バイオテクノロジーに取り巻く生命の問題」について考えてほしいとオロン・カッツ氏は述べています。
我々は科学の進歩により豊かな生活を得てきました。しかし、同時に人間の倫理的な判断も補わなければならないのではないでしょうか。バイオアートを通じて考えてみてもいいかもしれません。
参考:
sankei.com
japan.cnet.com