【実話怪談】奇妙な一夜の話!!この世のものではないモノを見てしまった!?

旅館 大学生
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2017/10/19
怪談
学生時代の夏休み、私は一人で中部地方一帯を旅行した。学生の身分から金のかからない貧乏旅行だったが、それなりに充実した旅だった。風景やその土地でしか体験できない経験をして私は満足だった。しかし、一番印象に残っているのはある旅館の奇妙な一夜だった。

長野県S市X町に辿り着いた俺は、一軒の古びた旅館を見つけた。中部地方を回るというだけで、何の計画も無かったため旅館の予約等もしていなかった。またホテルより旅館の方が場合によっては安いこともあった。

その旅館は町からかなり離れ、バスも2~3時間に1本という交通も不便な場所だった。森の中にポツンと一軒あるような静かなところだ。旅館の受付には女将と思われる女性が丁寧に出迎えてくれた。明るく気さくそうな女将だった。

私が通された部屋は和室の一人部屋だった。周りが木に覆われているため太陽の光が入ってこないようで、何となく薄気味悪い感じがした。また壁には所どころにヒビが入り、壁紙も茶色に変色していた。それでも料金の安さに私は惹かれ、ここに一泊することにした。

夜になるとますます不気味な感じが漂う。外は街灯もなければ月の光も届かない。風が吹けば木々の擦れる音が耳に入るほど静かな場所だった。嫌な雰囲気を感じた私は眠ることにした。明日早くに旅館を出ると決めた。

しばらくすると何かが蠢くような物音が聞こえた。それははじめ風が窓ガラスに当たった音と思った。風が止めば音も治まると思ったが、音はだんだん大きくなり私は異変に気付いた。ガラス窓はバリバリと音を立てた。もはや風ではなかった。

私は布団から飛び上がり、パッと部屋の隅に目を向けるとそこには、長袖、長ズボンを着用した女性が目の前で立っていた。状況を理解することはできなかったが、「この世のものではないモノを見てしまった」と気づいた。
次の日、私は布団の上で目を覚ました。どうやら恐怖のあまりそのまま気を失い、眠りに落ちたようだった。しかし、恐怖の感覚は残っていた。私は急いで荷物をまとめ、逃げるように旅館を後にした。

旅館の女将に昨夜の出来事を話せばよかったのだが、動揺していた私はその場を離れることで頭がいっぱいだった。

その後、ひとり旅を続け、夏休みをかけて中部地方を回る旅行は終わった。旅から帰っても、その旅館で起きた一夜の出来事が強烈に頭に残っていた。

それからだいぶ月日が流れた。大学を卒業後、会社に就職した。社内ではそれなりの地位に就き、数名の部下を持つようになるまでになった。学生時代のあの恐怖の体験はすでに頭には無かった。

ある日、会社の食事の二次会で私は数人と飲むことになった。二次会ということで私と部下4名の5人だけだった。

酔いもだいぶ回ったころ、部下の一人が故郷の話をはじめた。彼は、長野県S市X町の出身者ということがわかった。私は一瞬ドキッとした。それは私が大学時代に訪れたあの旅館のある町だった。

彼は地元の奇妙な話をはじめた。自分が中学の冬、ある旅館で女性が首つり自殺をした。自殺ではあるが、警察は殺人などの事件性を考慮して捜査に乗り出した。事件性は無いということで、自殺で処理された。しかし、自殺者を出した旅館には客は他所へ流れて次第に旅館は廃れていった。

この話を聞くと、間違いなく私が泊まった旅館ということがわかった。場所や外観まで私の頭の隅に残っていた記憶通りだからだ。今まで忘れていたあの体験が今頃になって蘇ってきた。

部下の話から、私があの夜に目撃したのはやはり幽霊で、私の部屋に現れたのは旅館で首を吊った女性だったのだろうと理解した。私の泊まった旅館の名前は思い出せないが、状況からいって間違いないだろう。

部下の話に私はあの夜の話をしようと思った。しかし、話を進める部下の話に私は耳を疑った。

「その後、旅館は潰れて女将も自殺した。それが一種の心霊スポットのように有名になった。観光客のなかには誰もいない旅館で一人で寝泊まりする風変わりな学生もいたらしいぜ」

私は部下に声をかけることを辞めた。私の顔色はみるみる青ざめ、そこにいる部下たちも私を心配するほどだった。その学生とは私のことではないだろうか。

私が泊まったあの旅館はなんだったのだろう。誰もいない旅館で寝泊まりしていたということだろうか。旅館も女将も自殺した女性もはじめから存在しなかったということだろうか。

私が体験した奇妙な一夜は、すべて幻だったのだろうか。