【実話怪談】住職の不思議な力!?僕だけが知っている祖父の秘密!!

住職 寺院
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怪談
画像: Swasti Dini on flickr
僕が子供の頃、祖父は寺院の住職をしていました。住職というと霊感や不思議なものを視れる人間と、子供の僕は信じていました。当時、霊能力を持った住職が、霊界の話や悪霊退治などをするテレビ番組で活躍していた時代でした。

しかし、うちの祖父にはそのような能力は無いと断言していました。祖父は村でも信頼の厚い人でしたが、口数も少なくどちらかというとおとなしい人でした。優しさもあり、時には厳しかった祖父を尊敬していましたが、霊能力の無い祖父にはがっかりでした。

不思議な力や霊能力などに憧れていた僕に祖父は諭すように語ってくれました。

「そうした力は無い方がいいんだ。怖い思いをしなくて済むし、なにより平穏に暮らせる」

子供の僕にはその意味が分かりませんでした。不思議な力を持つことは、カッコイイとしか思わなかったからです。男の子にありがちな特殊能力への憧れと同じだったのでしょう。今にして思えば祖父の言葉の意味はわかりますが、当時はそうは思いませんでした。

ある日、空が薄暗くなって僕が学校から帰ってきた時ことです。家には誰もおらず、僕ひとりだけの日がありました。

両親はある家の葬式に出席し、祖父も家にいませんでした。この時、父もお坊さんとなって祖父の下で働いていました。母はその家の知り合いということでお手伝いに出かけていました。

祖母は既に亡くなっていたため、この日は僕一人で夜を過ごさなければなりませんでした。ひとりでいることに慣れていましたから、寂しさや怖さはありません。

しかし、その時は何となく家の中の様子が違っていました。それは今まで感じたことのない悪寒に似た嫌な空気が家の中を漂っていました。今まで僕が感じたことのない雰囲気でした。
僕は恐るおそる家の中に入り、母が用意してくれた夕ご飯を食べ、眠くなるまで遊んでいました。やがて辺りは真っ暗となり、強い風が吹き荒れる夜がやってきました。

両親と祖父は僕が寝る時間になっても帰ってきません。遅くなることははじめからわかっていました。親には先に寝ているようにと言われていました。夜も更けて床に就こうとした時です。突然、裏の勝手口から「ドン!」という激しい音が聞こえてきました。
驚いた僕は飛び起きました。誰も居ない、誰も助けてくれない状態に怯えていましたが、様子を見ないわけにはいきません。僕は勇気を振り絞って勝手口に向かいました。

勝手口は強風の影響から扉が開いていました。元々、勝手口の扉は少しの衝撃でも開くようになっており、鍵も掛かっていないこともよくありました。どうやら強風にドアが開いてしまったようです。

僕は安心しました。勝手口の扉を閉め、鍵を掛けました。居間に戻り、布団に入ろうとした時、ある違和感が僕を襲いました。それは誰かが僕をジッと見ているような強い眼差しでした。

僕は勇気を振り絞って後ろを振り返りました。すると、そこには得体の知れぬ黒い物体がありました。ごそごそと動くその物体は人間の形をしていましたが、明らかに人間ではありませんでした。暗闇でハッキリと姿は見えませんが、この世のものではない異質な物体が僕を凝視していました。

凄まじい恐怖が、僕の意識を朦朧とさせました。身体の力は抜けてその場に倒れ、ただ呆然とその黒い物体を見詰めるほかありませんでした。僕は、その黒い物体がこの世のものではないと確信しました。

霊か妖怪かわかりません。しかし、薄れゆく意識の中で、確かにそれは僕の目の前に迫ってきました。

恐怖で意識を保つのも限界に達した時、僕の名を呼ぶ声と、後ろから走ってくる足音が聞こえました。それは、祖父でした。

祖父は、僕を守るようにして黒い物体の前に立ちはだかりました。後ろから伺える祖父は凄まじい形相で、黒い物体を睨みつけていました。それがその夜の僕の最後の記憶です。

夜が明けると僕は自分の布団の中で目覚めました。まるで何事もなかったかのような朝でした。両親はいつものように僕を起こし、朝食を食べるように促しました。祖父は居間で新聞を読んでいました。

僕は祖父に昨日のことを伺おうとしました。しかし祖父は、昨日は遅く帰ってきて、疲れてそのまま寝た、と言うだけでした。両親も取り立てて騒ぐこともない様子でした。僕だけが昨日の興奮を引きずっている感じでした。

その後、僕は祖父からあの夜のことについて聞くことはありませんでした。僕自身、早く忘れたい思いがあったからです。また僕ひとりが騒いだところで、独りでいる寂しさと、夢と現実を混同させているのだろうと大人たちに思われるだけだと考えたからです。

数年後、祖父は亡くなりました。僕は思春期を迎えて晩年の祖父とあまり話さなくなっていました。結局、あの夜のことは一言も話しませんでした。それは、もしかすると現実に起こったことなのではないか、という恐怖から口に出せなかったからです。

今にして思えば、祖父の言葉の意味がはっきりと分かるような気がします。

「そうした力は無い方がいいんだ。怖い思いをしなくて済むし、なにより平穏に暮らせる」

もしかしたら、祖父はそのような霊能力を備えていて、敢えて能力の無いように振舞っていたのかもしれません。なぜなら、その能力が僕にも受け継がれている可能性もあり、なにより僕に怖い思いや苦悩を経験させたくなかったからなのかもしれません。

あの夜の出来事は、今でも謎です。しかし、僕はだんだん現実と感じてくるようになってきました。

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