友愛の心霊研究!?第一次世界大戦の奇跡「モンスの天使」

キリスト教 戦争 モンスの天使 アーサー・マッケン 神智学協会
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2018/04/27
都市伝説
人間の力の及ばない奇跡の伝説は、世界各地に見受けられます。例えば、フランス・ルルドで出現した聖母マリアの奇跡や所有者に世界を制する力を与えるロンギヌスの槍の話など、キリスト教にまつわる神秘的な話は数多くあります。人間の想像を超えた神の奇跡に人類は魅了されるようです。

こうした人類を魅了して止まない神秘的な出来事を収集し、普及させようとした団体が、19世紀のアメリカで創設されました。その名は神智学協会。彼らは、人間を超える神秘性を探求することで、人類の友愛の実現や心霊能力の探求を目的としました。

神智学協会は現在でも脈々と引き継がれている秘密結社なので、その実態は明らかにされていません。しかし、彼らが起こしたとされる騒動が、第一次世界大戦中に起こります。彼らは、絶体絶命のイギリス兵を救った「モンスの天使」という超常現象の話を世界中に広めるキッカケを作ります。

今回は、神智学協会がキッカケとなって広まったといわれる「モンスの天使」を紹介します。

モンスの天使

モンスの天使とは、第一次世界大戦中のベルギーのモンスで起こった超常現象です。1914年のモンスで、千人ほどのイギリス軍兵士は、戦場で孤立し、1万人以上のドイツ軍兵に包囲され、身動きが取れない状況に追い込まれます。イギリス軍は打つ手もなく、敵の攻撃に怯えるばかりでした。

絶体絶命のピンチにひとりの兵士が聖ジョージの名を叫び、助けを求めます。聖ジョージ(聖ゲオルギオス)とは、キリスト教における聖人のひとりです。3世紀後半頃の古代ローマの英雄として知られ、ドラゴン退治の伝説も残しています。イギリスでは、兵士を守る聖人とも伝えられています。

聖ジョージの名を叫ぶと、天上から天使の一団が現れます。天使たちは一斉に矢を放ち、後にはドイツ軍兵士の死体の山だけが残りました。不思議なことに、死んだドイツ軍兵士の身体には、銃弾も矢の痕跡も見当たりませんでした。イギリス軍は天使の一団に助けられたのです。

この戦場の奇跡の話は、「モンスの天使」と呼ばれ、イギリスをはじめ世界各地で伝わるようになります。しかし、この話の流布には神智学協会が関係していました。戦場の奇跡の話には裏があったのです。

神智学協会

神智学協会では、霊的世界を研究することで、神の英知を学ぶことに繋がると考えられていました。人類の発展と人間の自由を追求しようとしたのです。またインドの仏教やヒンドゥー教を西洋に持ち込んだり、当時のインド植民地解放運動にも携わったといわれています。

彼らは、戦争や差別のない世界を追求し、世界的な友愛の実現を目的としています。そのため、世界で起こる神秘的な出来事を研究し、人類に役立てようと神智学協会は考えました。

第二次世界大戦中に起こったモンスの天使も彼らの議題に挙がりました。会合では、戦場で起こった奇跡は事実であると結論付けたのです。それが、世界中に信憑性のある奇跡だと流布されます。しかし、このモンスの天使には裏がありました。

マッケンの小説

モンスの天使には元ネタがあります。それはイギリスの怪奇小説家アーサー・マッケンの短編作品『弓兵』です。1914年にロンドンの雑誌でこの短編は発表されました。その短編は、モンスの天使の話とまったく同じ内容でした。

はじめ、注目されなかった『弓兵』ですが、教会関係者がこぞってこの作品を紹介し、神智学協会やその他の団体が取り上げたことで有名になりました。

モンスの天使が有名になった背景には、第一次世界大戦の混乱がありました。戦争から救いを求めて、神の奇跡にすがろうとしたキリスト教信者は、この話を信じてしまったのでしょう。

また、この奇跡の話に便乗して、モンスの天使の現場を見たという者まで現れます。作者であるマッケンも創作であると告白しましたが、手遅れでした。もはや収拾はつかなくなっていたのです。

モンスの天使は、戦争の混乱、神の奇跡と認定した神智学協会と教会関係者、そして敬虔なキリスト教信者たちによって現実のものと広まってしまったのでしょう。