「ママを返してよ!!」深夜に騒ぐ見知らぬ子ども!!それでも俺は悪いのか!?

子供 殺人 訪問者 マンション
604 views
2018/09/05
怪談
俺はある大手の企業に十年以上務め、それなりのキャリアを積んできました。同じ年に入社した者たちのの中では俺が一番出世し、今では大きなプロジェクトを任されるまでになりました。仕事の成功のため、毎日深夜に帰宅する日々でした。

ある日、深夜に帰宅した俺は、簡単にサワーを浴びてベットに横になりました。明日は大事な商談日でしたので、祖の打ち合わせでいつも以上に疲れていました。うとうとと眠りに入ろうとしたその時、扉を叩く音が部屋中に響き渡りました。

俺の住んでいる中層マンションにはオートロック機能が設備されていました。インターホンを押せば、映像で外の来訪者と通話できるシステムです。怪しい訪問者はこれで避けられます。しかし今、訪れようとする者は、扉を拳で叩いていました。

俺は無視しようとしましたが、相手はしつこく扉を叩き続けます。扉を叩く音と一緒に、扉を開けてくれるように懇願する相手の声も聞こえました。それは子供の声でした。

その子供は男の子らしく、扉の真ん中あたりを叩き続けました。インターホンに手の届かないほどの小さな子供だと察した私は、仕方なく玄関の扉を開けることにしました。

そこには5歳ほどの男の子が私の部屋の前にいました。疲れていた俺は大人気もなく怒鳴ってしまいました。

「うるさい、何時だと思っているんだ!子供は寝る時間だろ!」

「ママを返してよ。居るんでしょ、おじさんの友達と!」

男の子は訴えるように叫びました。俺には子供もいなければ、妻もいません。またこの子供にも見覚えはありませんでした。誰かと勘違いしていると思った俺は、無視して扉を閉めることにしました。どこの誰かもわからない子供に大切な睡眠時間を削られるのはもったいないと思たからです。

しかし、その男の子は扉に掴みかかって放そうとはしませんでした。

「ママを返せ!ママを返せ!」

あまりにうるさく抵抗するので俺はそばにあったペットボトルを子供に投げつけました。一瞬、子供が扉から手を放した隙に扉を閉めました。しばらく男の子は扉を叩き続けましたが、疲れたのか次第に力は弱まり、遂に気配もなくなっていました。
翌朝、俺は慎重に扉を開けました。昨夜の件もあったので、男の子がまだ扉の前にいると思っていました。しかし、そこには誰もいませんでした。安心した俺はすぐに出発しましたが、どうも何か違和感のようなものを感じてなりませんでした。

数日後、会社である殺人事件のニュースが飛び込んできました。その事件は、子持ちの女性が恋人の男性に殺害されるという事件でした。事件の犯人は、恋人の女性を殺したあとに幼い男の子を殺害したそうです。

その親子が殺害された場所というのが、俺の住むマンションでした。親子は母親の恋人である男性の住むマンションの自室で殺され、部屋で発見されました。そして犯人の部屋というのが、私の住む部屋の真上でした。

私は愕然としながらテレビから流れる事件のニュースを会社のロビーで見ていました。テレビ画面は殺害された母親とその子供の顔写真を映し出します。それは、あの日私が追い出した男の子の映像でした。

犯人は、男の子の母親である恋人が邪魔になり殺害し、訪れた男の子も殺したのです。それは俺の部屋に訪れたすぐ後のことでした。

おそらく部屋を勘違いしていることに気づいた男の子は、ひとつ上の階の部屋に辿り着き、男の部屋に向かって叫んだのでしょう。その時母親は既に殺されており、犯行がバレるのを恐れた犯人の手によって、男の子は殺されたのです。

その後、マンションは警察やマスコミなどで大騒ぎとなり、しばらく俺はホテル住まいをして会社に向かいました。その時、俺には気づいたことがありました。男の子が俺の部屋と犯人の部屋を勘違いした理由です。

男の子の身長では、私の階までしかエレベーターのボタンは押せません。しかし、私が男の子に投げつけたペットボトルを使って、足りない身長を補って犯人の部屋の階のボタンを押したのでしょう。

私が感じた違和感は外に投げ捨てたはずのペットボトルが、翌朝扉の付近に無かったことでした。

男の子を助けることのできなかった俺は、罪の意識に苛まれました。もしあの時、男の子の事情を考慮していれば、救えた命だったのかもしれないのです。

事件からしばらくして、マンションの部屋を引き払い、会社も辞めました。あれほどしがみついていた出世の道もどうでもよくなったのです。
今では細々と暮らしています。男の子の命日には、必ず懺悔の気持ちでいっぱいになります。