ハゲワシがついばむ「鳥葬」
紀元前にペルシャ人により創始された宗教がゾロアスター教です。これは火を神聖視する宗教で「拝火教」とも呼ばれています。インド在住の教徒たちが行っていたのが鳥葬です。死者の肉をハゲワシについばんでもらい、骨は自然にまかせるという弔い方です。ただ道端に遺体を放置するのではなく、ダフマ(沈黙の塔)と呼ばれる、頂上がすり鉢状の専用施設で執り行われます。
運ばれた遺体の衣服を剥ぎ、鳥が食べやすいように解体されていきます。
この様な特異な弔い方が生まれた背景には、ゾロアスター教の特殊な教えがあります。遺体はけがれたものと考えられ、火葬や土葬をしては火や土をけがしてしまうと信じられていたのです。
ゾロアスター教では、火は大切なものだけに、火葬は考えられない葬り方だったのです。

肉食獣に食べてもらう「獣葬」
アフリカ東部に住むマサイ族は獣葬で死者を弔います。これは肉食動物に遺体を処理してもらう弔い方です。死期が近づき身体の自由が利かなくなった者は、家族がサバンナまで運んでそのまま放置されます。あとはライオンやハイエナに、まかせるという方法です。
これは、サバンナで生きるマサイ族ならではの考え方で、生も死もサバンナにゆだねるという考えからです。自然の中で生きている彼らだからこそできる弔い方なのです。
遺体をただ放置するだけの「風葬」
放置することで、遺体が風化していくのにまかせる風葬は、インドネシアのボルネオ島に住むイバン族に見られる方法です。とはいえ、すべての人にこの方法が執られるのではなく、風葬にされるのは一部の指導者だけだそうです。彼らは霊になるのではなく、神になると考えられています。自然にまかせる風葬が見られるのは、イバン族だけではありません。オーストラリアや北アメリカ、かつては日本の沖縄などでも同じような方法が行われていたといいます。
遺体を近親者で食べる風習
パプアニューギニアの少数民族、フォレ族には遺体を食べる風習がありました。これは彼らの魂や肉体を、近親者が受け継ぐという考えから生まれました。しかし厄介なことに、この埋葬法は遺体を食べた近親者がクールー病という風土病に罹る原因でもありました。このことから、現在は遺体を食べるという風習は禁止されています。
鳥葬、獣葬、風葬など、ちょっと日本では馴染みのない弔い方を紹介してきました。文化や風習の違いとはいえ、その背景を知ると、意外に納得するものもあったのではないでしょうか。
死者を悼む気持ちは、形こそ違っても万国共通なようです。
参考サイト:
お葬式のいろは
13.pdf
Jinkawiki